男性を診ている男性

性行為を感染経路にする感染症は、従来から性病と呼ばれてきました。日本では伝統的に梅毒や淋病など4種類の性病が一時期猛威を振るったことから、特に公衆衛生当局の関心も高かったわけです。しかし、このカテゴリーでの認識は時代に合わなくなっています。軟性下柑や第四性病などは本邦ではほとんど報告症例がなく、新規患者数の多くは東南アジアや南米など感染地域への渡航経験などの後に感染が発覚する程度です。実際に感染経路になるのは性行為だけでなく、感染粘膜との接触をもつ性的交渉であればオーラルセックスなども感染経路として無視できない状況が現出しています。オーラルセックスなども伝染するのを予防する観点からも、コンドームの積極的使用が必須です。

粘膜感染する事実をふまえて、感染経路を性行為に限定することの必然性は希薄になっているのです。性風俗の昨今の成長ぶりを見れば制サービス従事者にあっては、オーラルセックスなどがむしろ一般的になっている状況です。人間と性との関係性のあり方に、大きな変動が起きている今日の状況に適合した疾病概念を確立する必要があります。そこで登場したのがSTDというカテゴリー。

STDとは性行為感染症と訳されており、オーラルセックスやキスなど幅広い経路でうつる疾病を広く包含し対策を検討しようというものです。STDの概念が定式化したことで、これまで注目を集めることのすくなかった色々な疾病群も含めた対策を取ることが可能になったわけです。従来の性病に加えて性器クラミジアや毛ジラミ症、カンジダ症やウイルス性肝炎など、健康に脅威になりうる疾病も含めた考察が可能になりました。

STDの対策を検討するうえで重要なのは、感染症の種類によって死に至るという事実です。典型的なのはエイズや梅毒を指摘することができます。エイズは原因となるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)は性行為を介して、体内に侵入すると免疫細胞に取り付き、増殖を開始します。HIVは急速に増殖する過程で免疫機能の破壊が徐々に進行してゆくことになります。そして免疫機能の荒廃が一定以上のレベルに達すると、重症の肺炎や特殊な皮膚がん・エイズ特有の脳症など23種類の中で一つに診断が付けばエイズと確定診断されることになるのです。エイズ発症を意味する合併症は、進展すれば死亡するリスクが高いので、治療をしない限り確実に致命的な経過を辿ります。
しばしば放置すれば重症化するリスクを抱えている性病は、感染初期に症状を示さない傾向があります。コンドームを使用することによる予防は重要ですが、早期発見することで治癒や迅速な回復につながります。早期発見に役立てることができるように、症状別に代表的な性病の特徴や傾向をおさえておきましょう。

症状別のなかで注目するべきなのは、排尿時の違和感です。尿道付近の違和感や、頻尿・膿が混じるなどの異変は淋病やクラミジアなどを疑う症状といえます。女性の場合オリモノの変化には、敏感になるべきです。カッテージチーズ状に変化して量も増加すればカンジダ症、悪臭を伴い色合いも黄緑色で泡立つような形状のオリモノは、トリコモナス症を示唆します。
性器の外見の変化も目安を提供してくれます。典型的なのは、痛みがないイボが多発するというもの。これはHPVというウイルスを原因とするコンジローマの疑いが強くなります。反対に痛みをともなう水膨れが複数性器やその周辺に発生しているときには性器ヘルペスを疑うべきです。性器に赤みがでたり、発疹などを確認できるときは、性器クラミジアや膣カンジダ症、トリコモナス症など複数の性病のシグナルといえます。